0からオシャレを始める方へ
突然ですが、この画像を見たことはありますか?
これは一時期ネットで話題になった高城剛さん(女優の沢尻エリカさんの元旦那)のファッションです。
この写真がネット上に出回った時、
「これって…オシャレなのか?」
「上級者過ぎて分からん」
「これがダサいと思える自分はダサいの?」
など数々の疑問が飛び出しました。
嘲笑したり、あからさまにバカにした言葉を発する人も多くいました。
正直に言うと、私も彼のこの写真を見る限りオシャレかどうかは分かりませんでした。
そこで知り合いのファッション業界の人間に聞いたところ、
「合わせ方としては確かにオシャレだけど、全体として見た時に違和感があるかもね」
という回答でした。
…ますます分からなくなりました。
本当にそんなカッコ、したいですか?
申し遅れましたが、私は宇良川(ウラカワ)と言います。以前にファッション誌の編集者をやっていました。
意外に思われるかもしれませんが、ファッション誌を製作している人間と言っても、全員が「服オタク」とか「家に腐るほど洋服が溜まっている」という人ばかりではありません。
もちろん一般的な基準よりは服好きが多いかもしれませんが、バイヤーさんやショップ店員さんに比べるとライトな層も多いですし、ハッキリ言って自分の服には無頓着な人もいます。
私自身も、服は昔から好きだったのですが、どちらかと言うと「ライトな層」なので一般人に近い感覚を持っていると思っています。
その編集の仕事をしている時からいつも疑問に思っていることがありました。
それは、
「雑誌に載ってる『オシャレ』と、本当の初心者が求めてる『オシャレ』って違うよな」
ということです。
例えば、こんなファッションスナップがあります。
これは、断言しますが、オシャレだと思います。
シルエット・デザイン・バランスを考えても非常に完成されています。
ですが、おそらくこれを見た人の多くが
「なんだこりゃ」
と思うのではないでしょうか。
バイヤーさんやデザイナーさんなどファッション・アパレル業界に携わっている人間であれば理解できることであっても、一般の人にはちょっと受け入れ難い…
そう感じる人は多いはずです。
多いはずなのに、ほとんどの雑誌や「ファッション通」の人たちは一般の人にもその文脈を押し付けようとしているのです。
「これを見てオシャレだと思えないの?センスないね」
といった風に、「分かっている」彼らが「分かっていない」人を、ある意味で見下しているように私は感じていました。
服がさっぱり分からない人に、本当に必要なもの
ですが、本当にさっきのような格好をすることが、多くのファッション初心者の方が求めていることなのでしょうか?
「雑誌を見ても何を着れば良いかさっぱり分からない」
「今までまともに服を買ったことがない」
「自分では似合うと思っていたのに周りからはダサいと言われる」
こういった悩みを持っている人に、「分かっている」人たちのセンスを押し付けて
「これが『オシャレ』っていうもんなんだよ」
と、したり顔でニヤつきながら教えるのが良いことなのでしょうか?
…
綺麗事だと言われるかもしれませんが、私はそうは思いません。
これまで洋服には無頓着だったけど0からファッションを学びたい方、本当に服のセンスがなくて悩んでいる人、周りからダサいと馬鹿にされている人…
そういった人たちに必要なのは、最初に載せた高城剛さんのような一部の服オタクにしか分からないセンスを身につけることではなく、やたらとハイブランドや洋服の知識を詰め込むことでもなく
「とりあえず、今の自分に似合っていて、他の人から見ても恥ずかしくなく、外出するのが楽しくなるような格好」
ではないかと、今の私は考えています。
小学生にいきなり微分積分を教えたら、高確率でその子は算数が嫌いになるでしょう。訳が分からないからです。
それと同じで、これからファッションに目覚めます、というような方にとってはいきなり高度なことから始めるのではなく
「まずは簡単に、今の自分から一歩カッコ良くなれる服装」
を目指すのが良いのではないでしょうか。
雑誌と店員が知識を汚染する
ですが、今の多くのファッション誌やショップ店員さんが初心者の方に向けて言う内容は、上で書いたことと真逆です。
雑誌を作っていた人間の1人として、こういった事をいうのは自分を否定しているようで嫌なのですが、正直そうだと思います。
ご存じの方もいるかもしれませんが、今のアパレル業界はユニクロの一人勝ちです。
ユニクロだけでアパレル業界全体の10分の1を売り上げていると言われています。
ブランド力のないショップはどこも苦しいです。(有名ブランドですら苦しいですが)
ですので、どこのお店でも店員さんは直近の数字、売り上げを確保することに追われてしまっています。
そして目先の利益ばかりを考えた結果、お客さんの気持ちを考えることが疎かになり、結果的にお客さんが離れていくという悪循環に陥っているのが多くのアパレル店の現状なのです。
ファッション誌も、あれは実質的に全部広告ですから、商品を良く見せるために間違った知識や必要のない知識もわざと含めて、何も知らない人に勘違いさせやすいように意図して構成されています。
多くの雑誌・ショップ店員は売り上げに追われ、それが間違った知識であったとしても相手に知識がないのを良い事に教え続ける場合がほとんどです。
私たちはそれを真に受け、汚染された知識をインプットし続け、お金と時間とエネルギーを浪費し、結局ファッションなんて分からない、周りからも嘲笑され、「自分にはファッションセンスがないのだろうか?」と自分を責め、自分を嫌いになってしまいます。
このサイトを見ても「ガチのオシャレ」にはなれません。
私がファッション誌の編集という仕事から身を引いたのは、上記のような現実のズレに耐えられなかったからです。
私自身は、今まで洋服に無頓着でこれからファッションを学びたい人や、色々試してみたけどどうしてもオシャレになれずお金だけ失っていくような人、そういった人たちを助けたいと思っていました。
ですが実際にお給料をもらうためにやっている仕事は、むしろそういった方を苦しめてしまっているのではないかと感じるようになってしまいました。
だから今度は少し違った形で、自分の作りたいものを、自分の伝えたい知識を提供できる場を持ちたいと考えました。
それが、当サイト「小さなオシャレのはじめかた」です。